本年度の各種委員会委員は次の方々に決定 しました.
会計委員 佐々木 武 吉田 正章 国際交流委員会 西川 青季(委員長) 石井 仁司 桂 利行 小谷 眞一 諏訪 立雄 西川 青季 吉田 正章 八杉満利子 出版委員会 谷島 賢二(委員長) 岡本 和夫(担当理事) 上野 健爾 砂田 利一 松本 幸夫 谷島 賢二 学術委員会 野口潤次郎(委員長) 深谷 賢治(担当理事) 斎藤 政彦 砂田 利一 谷崎 俊之 野口潤次郎 三輪 哲二 吉川 敦 (以上運営委員) 大島 利雄 小島 定吉 渡辺 公夫(以上専門委員) ICM90記念基金委員会 浪川 幸彦(委員長) 野口潤次郎(学術委員長) 西川 青季(国際交流委員長) 森 重文(IMU理事) 数研連委員長 広報委員会 渡辺 公夫(委員長) 渡辺 公夫 楠岡 成雄 桂 利行 科研費問題専門委員会 松本 尭生(委員長) 小田 忠雄 荻上 紘一 岡本 和夫 加藤 順二 諏訪 立雄 藤本 坦孝 堀田 良之 編集委員会 ジャーナル 後藤 四郎(委員長) 江田 勝哉 大島 利雄 後藤 四郎 斉藤 裕 酒井 文雄 志賀 徳造 西川 青季 日合 文雄 藤本 坦孝 松村 昭孝 松本 幸夫 望月 清 吉野 雄二 若林誠一郎 数学 真島 秀行(委員長) 市村 文男 伊藤 秀一 太田 琢也 川崎 徹郎 今野 宏 志村 立矢 種村 秀紀 筒井 亨 堤 誉志雄 宮地 晶彦 山本 博夫 横川 光司 吉田 朋好 吉田 朋広 (以上常任) 今吉 洋一 宇澤 達 大鍛冶隆司 金子 昌信 木上 淳 剱持 勝衛 幸崎 秀樹 小高 一則 児玉 秋雄 小林 治 佐藤 栄一 佐藤 圓治 神保 秀一 寺本 恵昭 長尾 壽夫 成川 公昭 野倉 嗣紀 野村 隆昭 林 実樹広 枡田 幹也 松澤 淳一 数学通信 浪川 幸彦(理事長・責任者) 岡本 和夫(出版担当理事) 楠岡 成雄(理事) 小澤 徹 長谷川浩司 塚田 和美 小林 亮一 河野 明 難波 誠 内藤 博夫 鎌田 正良 (以上支部評議員) 真島 秀行(数学編集会) 水谷 優子(事務長) パブリケーション 藤原 大輔(委員長) 伊原 康隆 上野 健爾 落合卓四郎 砂田 利一 西田 孝明 藤原 大輔 渡辺 信三 Advanced Studies in Pure Mathematics 小田 忠雄(委員長) 新井 仁之 井川 満 伊原 康隆 大島 利雄 小田 忠雄 落合卓四郎 柏原 正樹 加藤 和也 川中 宣明 川又雄二郎 砂田 利一 高橋陽一郎 谷崎 俊之 西川 青季 野口潤次郎 三輪 哲二 向井 茂 森田 茂之 坂内 英一 日本数学会メモアール 柏原 正樹(編集委員長) 三輪 哲二(編集局長) 岡本 和夫(担当理事)
会報84号でお知らせしましたとおり,日本数学会では,日本学術会議第17期会員候補として,上野健爾氏(京都大学)と岡本和夫氏(東京大学)の両名を,日本学術会議に推薦いたしました.
5月14日に行われた日本学術会議推薦人会議の議を経て,この度上野健爾,岡本和夫両氏が選ばれ,7月22日に正式に任命されました.
会報84号で告示した標記委員の選挙については,4月の第1回投票,5月の第2回投票が無事終了しました. この度,日本数学会の推薦する委員の人数は16人である旨日本学術会議から通知がありましたので,選挙結果をもとに本会規約にのっとり推薦を行います. 委員の名簿については確定後次号の会報でお知らせ致します.
運営委員
今年の6月末日に,7年間運営委員を務め前委員長であった川久保勝夫氏と6年間運営委員をされて来ました大島利雄氏が内規により任期満了となり,木上淳委員が1期目で1年任期を残していますが,1年間の外国出張ということで辞任しました.
7月1日より砂田利一,谷崎俊之,斎藤政彦の諸氏が新委員として加わりました.
運営委員の任期は3年です.
従いまして,現在の委員構成は,次の通りです.
( )内は,主たる分担と何期目かを表しています (RW=Reginal Workshop).
野口潤次郎(委員長,2期目),三輪哲二(RW, 2期目),吉川 敦(RW, 2期目),砂田利一(湘南数学セミナー, 1期目),谷崎俊之(1期目),斎藤政彦(1期目),深谷賢治(担当理事,任期1年).
専門委員には,次の諸氏をお願いしています. 専門委員の任期は1年です.
大島利雄(電子便宛名一覧),渡辺公夫(広報・湘南数学セミナー),小島定吉(RW).
学術委員会の内規によれば,学術委員会の目的は次のように書かれています.
第2条 委員会は,日本数学会の学術的
活動全般について企画立案し,理事会に勧告,その承認を得て実行する.
現在,理事会より本委員会に諮問されている事項は次の通りです.
活動状況と課題
上記諮問事項について現在の活動状況と課題を番号順に纏めます.
「活動状況と課題」の中でも触れられましたが,従来の募集案内で,開催場所について「研究代表者の所属する大学で開催する」と規定してあり,限定的過ぎるとの意見があり関連委員会で検討の結果次のように変更されました:
「組織委員代表者または組織委員の所属する大学で開催する」
今回,37頁に,関連する部分の変更も含め変更済みの「Regional Workshop 提案募集」があります.
既応募分も含め今後は,この方針で運営されます.
皆様の積極的応募をお待ちしています.
(学術委員長 野口潤次郎記)
(1)来日数学者に対して以下の条件で講演の援助をしておりますので数学会事務局に申請書類をご送付して下さい.
援助の対象者は来日数学者で以下の要件を満たすものです.
申請の際には,以下の項目を書いて下さい.
(2)国際交流委員会では以下の要領で援助をしておりますので 1998年4月1日から1999年3月31日までに開催される国外研究集会に対して援助を希望される方はご応募下さい.
国外研究集会援助規則
(前国際交流委員会委員長 小谷眞一記)
平成8年7月から平成9年6月までの出版委員会の活動をご報告いたします.
委員長:谷島賢二,出版担当理事:岡本和夫,委 員:上野健爾,砂田利一,松本幸夫.
(前出版委員長 松本幸夫記)
Advanced Studies in Pure Mathematicsシリーズ新刊について
赤堀隆夫(姫路工大), 小松玄(阪大), 宮嶋公夫(鹿児島大), 難波 誠(阪大), 山口佳三(北大)各氏の編集になる Advanced Studies in Pure Mathematics 第25巻 CR-Geometry and Overdetermined Systems(約425ページ)が1997年7月に発行されました. 今後とも, 日本数学会国際研究集会や, 京都大学数理解析研究所プロジェクト研究等を核とした続巻を刊行すべく企画が進行中です.
(ASPM編集委員長 小田忠雄記)
広報委員会は春・秋の学会に先立ち,記者発表会を行い,広報活動に努めてきた.
しかし,記者発表会の後に受賞者の名前・業績に関して広報活動したのでは,情報の鮮度か落ち,新聞への掲載率が低いという状態が続いた.
次回からは,理事会での受賞決定に従い,受賞者とその業績に関する情報を学会前日の記者発表に先立ち,広報委員会がまとめ,前もって新聞各社に送ることとなった.
50周年記念行事として,数学会のシンボルマークを公募した. 広報委員会で検討し,理事会に提出したが,確定にいたらず. しばらく,川崎氏の knotted torus を従前通り使用し,様子をみることとなった.
理事長の交代,建部賞の新設,東南アジア数学会会長の交代等に伴い,パンフレットを更新することとなった.
各大学での体験学習として,数学の公開講 座の開催が盛んに行われている.日本数学会 としては
を行っているが,これらは大都市に集中しがちである. したがって,これらを補完するものとして移動する数学セミナー「サロン・ド・すーがく」を開催してきた. 試行期間を経て運用に向けて準備中である. 目下,目的を明確化し,運用に関するマニュアルを作成中である.
(広報委員長 渡辺公夫記)
日本数学会理事会では,科学研究費をめぐる様々な問題に対処するため,科研費問題に関するワーキンググループを設けて,情報の収集,広報活動を行って来ました.
この度,このような活動をより充実させるために,ワーキンググループを発展的に解消して,科研費問題専門委員会を設置することにいたしました.
この設置は,4月24日の理事会で認められました.
専門委員会は,科学研究費に関する,日本数学会として対応すべき種々の問題についての理事会の諮問に対し,専門的立場からこれを検討して理事会に答申します.
また,常に資料収集に努め,会員に対する広報活動を行います.
科研費ワーキンググループとして行った,外国旅費の使用状況に関するアンケート結果は,会報85ですでに紹介したところです.
また,科研費審査委員推薦のあり方について,理事会からの諮問も受け,さしあったて,平成10年度の審査委員推薦方法については,その案を理事会に提出しています.
現在の委員と任期はつぎの通りです.
委員長 松本尭生 (1997.5-1999.2) 委 員 小田忠雄 (1997.5-1998.2) 荻上紘一 (1997.5-1998.2) 加藤順二 (1997.5-1998.2) 諏訪立雄 (1997.5-1998.2) 藤本坦孝 (1997.5-1999.2) 堀田良之 (1997.5-1999.2) 岡本和夫 (1997.5-1999.2)
平成7年11月に科学技術基本法が施行され,科学技術基本計画に基づいて政府の研究開発投資額の抜本的拡充が図られ,制度面でも柔軟かつ競争的な研究環境を整備することがうたわれています.
その一環として,平成8年度には上記補助金の総額が1千億円を超え,厳しい財政改革の中でも,増額が続いています.
この助成金は「大学等における優れた研究を格段に発展させることを目的とし,学問全般にわたり,研究者の申請に基づき,学術審議会に設けられた審査組織における専門的見地から優れた研究を選択的に支援する」(平成8年7月学術審議会中間まとめ)ものです.
「大学等の真に基礎的な研究や,先駆的でリスクの大きな萌芽的研究,若手研究者の優れた着想による研究など,我が国の研究基盤を形成する研究を助成する」という考えにより,数学分科にも申請件数・申請金額をもとに全体の1%程度が配分されてきました.
今年も申請時期が近づいてきたので,いくつか注意を喚起すべき事項を整理したいと思います.
調書の書き方については三町さんが別に書いてくださるので,ここでは細目の変更予定などについて記します.
細目は申請件数が300を超えないようにしたいという配慮から「解析学」が「基礎解析学」と「大域解析学」に分れ,他の細目のキーワードも少しずつ変わり,旧来の4細目が5細目に再編された形になるようです.キーワードの確定したものは公募要領を見ていただくことになりますが,学術月報4月号によれば,細目(暫定キーワード)は,
代数学 (数論,代数幾何,代数一般, 群論,環論) 幾何学 (微分幾何,複素多様体論,位相 幾何,複素解析幾何,微分トポ ロジー) 基礎解析学(複素解析,実解析,関数方程 式,関数解析,確率解析,代 数解析) 大域解析学(関数方程式の大域理論,変分 法,非線形現象,多様体上の 解析,力学系,作用素環) 数学一般 (数学基礎論,確率論,統計数学, 応用数学,組合せ論,情報数理, 有限数学)
となっています.
大枠は変わらないと思いますが,一部変更があるかも知れません.
審査は細目ごとに行われるので,申請に当たっては,キーワードを充分考慮の上,研究代表者の判断で細目を選択ください.
後述するように採択率はどの細目でも同じです.
また,審査委員の方々には細目分類はある意味では便宜的なものであるという点にも充分配慮いただき,広い観点から審査いただけるようお願いしたいところです.
申請および研究実行は研究代表者が主体的・専権的に行うものであるということを強調しておきます.
研究分担者以外に旅行を依頼することも,ときに理由を書く必要がありますが,それ以上の問題点は何1つありません.
図書を備品で買うことも必要なら当然の行為です.
また,研究期間が2年以上のものは研究報告書が冊子で必要なことにも留意下さい.
一昨年まであった総合研究Aは異なる研究機関に属する複数の研究者が研究を行う基盤研究(1)に含まれた形になっております.
従って,総合研究Aと一般研究を重複申請する代わりにその合計金額で基盤研究(1)を1つ申請するという考え方は昨年と変わり無い筈です.
この場合も,研究集会等の旅費を使用するだけならば,基盤研究(2)でも可能です.総合研究A的な研究はこれまで数学の進歩に大きな役割を果たしてきたと思われますので,その利点を生かした研究方法を各専門分野等で続けていただければ幸いです.
研究(1)を選択するのは,研究分担者の半数以上他の研究機関の研究者をいれるか,補助金を分担者に配分する場合です.
(1)では研究代表者が経理責任者になるので,あまり細かい配分をしない方が賢明です.
種目の重複申請の可能性は各年度で変わりうるので,必ず公募要領を熟読ください.
昨年は基盤研究に,(一般),(展開研究),(企画調査)の区別があり,それぞれ1件以内ならば重複申請可.
奨励研究Aは採択率がよい代わりに他種目への重複申請は不可.萌芽的研究は基盤研究C(一般)・奨励研究A以外とは重複申請可でした.
記述が肯定ではなく否定で書いてあるので注意が肝要です.
さらに,重点領域研究の公募研究への応募はほとんど重複申請が可能です.
また,数学関係からの応募実績は確認しておりませんが,特別推進研究というのも有ります.
重点領域の研究領域の申請は,時期が別ですが,その準備は従来総合研究Bで行うことになっていましたが,昨年から基盤研究(企画調査)で行うことになっています.
「無限可積分系」の実績も有りますので,研究領域の申請も是非とも行ってほしいものです.
基盤研究(一般)は特色ある研究を格段に発展させるものとなっていますが,真に基礎的な研究の独創的,先駆的なものを推進するものです.
学術研究は,その研究成果が人類共通の知的財産になるという表現が先にも引用した平成8年7月の学術審議会の科学研究費補助金の充実(中間まとめ)にあります.
個々の研究の申請が審査されるわけですが,単なる申請技術の競争に堕することなく,レベルの高い研究を奨励し,その総体としては数学界全体の健全な発展に寄与し,文化的価値を高めるようにしなければならないと考えます.
科学研究費補助金は実験を主体に考えられてきたので,数学研究の立場からは少々異質なところもあります.
一方,旅費が研究費の大半を占める研究計画についても無限可積分系以来文部省でも理解はある程度進んでおります.
これからは数学や文化を担う学問の研究にはどのような研究費が有効かについても提言出来るよう準備が必要です.
現状でも,研究者の育成・研究環境の整備に有効利用することは可能であり,重要です.
事後の評価についても検討されているようですので,何が大事かについて共通認識が持てるようにする努力も必要でしょう.
審査については,日程を含む審査方針が公表されています.
昨年はこの部分が大々的に配布されました.公表されたものにほんの少し内情探索を加えると,第1段審査員が書面審査で5段評価を行い,それを審査員毎に2桁の点数(Tスコア化)に換算し3ー6名の審査員の点数を合計したものによって〇や△がついたものが基礎資料となり,第2段審査はそれから総合的な観点から合議によって採択課題を決めるようです.
数学分科の第2段審査はバランスも考えて大変な努力をしております.しかし,基本的には第1段審査員の評点で決まります.
審査が公正で,数学界の健全な発展に寄与できるよう,専門委員会でも理事会の諮問を受けて委員の推薦方法や各種資料の収集提供等を検討しております.
採択された課題の一覧は科学新聞,ぎょうせい発行「文部省科学研究費補助金採択課題・公募審査要覧」の他,学術情報センターのデータベースに登録される予定です.
とくに採択課題・公募審査要覧には配分基本方針,配分審査,種目ごとの採択率等も詳しく載っているので,是非とも参考にしてください.
とくに,それぞれの考えでデータの整理をされた方はその結果をお知らせいただけると幸いです.
採択率は決して低くないのですが,固定客が増える傾向に有り,申請をしても採択されないと思ってしまう人が多くなる可能性があります.
その人たちが申請を止めると,分科への配分が申請件数と申請金額に関する比例配分であることから,実は数学分科への配分が確実に減るという大変なことが起こります.
それは研究種目ごとの分科への配分額が次の式で決まるからです.
分科への研究種目ごとの配分額=A+(BーA)×(5a+5b)/10 ただし,それぞれの研究種目に対して,A=継続研究課題の本年度分の内約額,B=当該研究種目の本年度配分予定額,a=新規申請本年度研究経費の内その分科の分/新規申請本年度研究経費,b=新規申請研究課題数の内その分科の分/新規申請研究課題数.
採択された研究代表者もこのことをご理解いただいた上で,研究の実施をお願いいたします.
また,不運にもその年は採択されなかった申請者は,研究集会等への参加に当たっては堂々と主催者や関連の研究代表者に旅費の支給を願い出ていただきたいと思います.
勿論多くの場合資金不足で無理と思いますが,余裕がある場合には,事情が考慮されると思います.
審査委員についても過去のものが採択課題・公募審査要覧に本人の了承のもとに公表されています.
その一部をを採録しましょう.
平成元年からの理学小委員会委員は小田忠雄(1年),難波完爾(1・2年),荻上紘一(2・3年),村松寿延(3・4年),近藤武(4年),加藤順二(5年),松本尭生(5・6年),諏訪立雄(6・7年),藤本坦孝(7・8年),堀田良之(8年)です.
第1段審査員の公表は平成7年度からで,代数学:森田康夫,川中宣明,渡辺敬一(7年),坂内英一,上野健爾,織田孝幸(7・8年),伊吹山知義,向井茂,野海正俊(8年),幾何学:荻上紘一,酒井隆,森田茂之,高橋恒郎(7年),河内明夫,西森敏之(7・8年),坂根由昌,西川青季,河野明,佐々木武(8年),解析学:橋爪道彦,望月清,水田義弘(7年),藪田公三,河野実彦,加藤崇雄(7・8年),風間英明,島倉紀夫,藤原英徳(8年),数学一般:三好哲彦,榎本彦衛,藤越康祝,永島孝(7年),江田勝哉,河野敬雄(7・8年),池田勉,小沢正直,柳川尭,小林孝次郎(8年)でした.
平成9年度の委員の公表は来年度ですが,今度の審査は平成10年度の委員が担当します.
審査の要点は要覧に詳しく載っており,三町さんの解説もあります.そちらを参考にしてください.大変すばらしい解説です.
第2段審査のときに付き合ってくださる学術調査官経験者の1人が科学研究費補助金のホームページを開設しています.こちらも是非ともご参照ください.
http://www.pe.titech.ac.jp/MizumotoLab/kaken/index.html
(科研費問題専門委員会委員長松本尭生記)
数学教育小委員会の委員長を1期3年にわたってさせていただいた.
責任の大きい仕事であることは承知していたが,実際になかなかしんどかったというのが実感である.
数学教育小委員会は数学研究連絡委員会に属する委員会で,日本学術会議から公認された小委員会である.
その構成委員は日本数学教育学会から推薦された2名の数学研究連絡委員とさらに数学教育に関心のある数学研究連絡委員に加え,さらに若干の委員を補充する.
そのとき,数学教育のための研究連絡委員会は無いので,数学教育関係の諸学会からの代表が複数入るように考慮することになっている.
ここで数学教育というのは主に普通教育での数学教育をさすが,大学の数学の基礎教育なども関心のうちにあっていい.
小委員会の仕事は大別すると国際対応と国内対応に分かれる.
国際対応:
ICMI(International commisーsion on mathematical instruction) という国際組織がありこれはIMU(Internationalmathematical union)の中の委員会であって,この国内対応の委員会として,数学教育小委員会が機能している.
だからICME(数学教育世界会議,4年に一度,ICMの開かれない偶数年に開催される)への代表派遣や国際的な数学教育関係会議も小委員会が関わることがある.
数学教育小委員会の委員長はICMIの日本の代表者となることが普通である.
ただし,ICMIはICMのときの総会で役員が決まり,翌年から4年間が任期なので,研連の委員の任期とずれることもあり,必ずしも自動的に変わるわけではない.
国内対応:
数学教育に関連したことはいろいろある.
数学教育の小委員会で意見をまとめて,数研連で議論して成案ができれば,学術会議会員を通して学術会議に働きかける事が可能である.
具体的には入試センター関係のこと,教育関係の審議会(中央教育審議会,教育課程審議会)への要望をまとめて出すことがある.
(飯高 茂記)
前期15期に山口委員長の下で活動を行った応用数理小委員会は,引き続き今期も15名の委員をもって構成し,活動を行った.
15名中10名は数学研究連絡委員会委員が,また数学研究連絡委員会委員以外の5名としては工学系学部の出身者または在籍者が参加した.
委員長は森が,また幹事は牛島,西田の両委員がつとめた.
今期初頭には,応用数理小委員会が今期中に検討したことを応用数理白書のような形でまとめて外部にも公表することを計画したが,諸般の事情で実現しなかった.
また,工学系学科および数学科の学生のための応用数理カリキュラムを提案することも計画していたが,実現に至らなかった.
そこで,これまでに開催された小委員会の会合記録をもとに,今期の活動のまとめを作成し,このメモの形で次期の委員会に申し送ることにした.
数学は元来それ自体閉じた学問体系として独自に研究対象となるところに大きな特徴がある.
一方数学は,自然科学,工学をはじめとしてさまざまな学問分野の論理的背景を支えるものであるために,必然的に数学以外の分野との接触を免れるわけにはいかない.
実際,自然科学や工学では数学は不可欠の道具であり,逆にこれらの分野から純粋数学の新しい研究課題が生まれてくる.
したがって,数学を強力な道具として活用している研究者あるいはそのような視野から数学自体を研究対象としている研究者が数学以外の学問分野に大勢いる.
一方,数学界の中にも応用を指向した数学を課題として研究している数学者がいる.
応用数理とは,そのような研究者の研究対象の総称あるいは研究態度の総称であると考えることができよう.
近年のコンピュータの発展と普及によって数学の重要性が著しく高まったといわれているが,実際には応用数理の置かれている環境はそれほど楽観できるものではない.
たしかに,産業界においても数学の果たしている役割は厳然として大きく,とくにソフトウェア技術の基盤を支えるものは数学であるといっても過言ではない.しかしながらわが国の産業界では,応用数理的技術の開発に対する必要性は認識していてもそれが実行に移されるケースは少なく,したがって,応用数理的技術の発展に対する産業界からの寄与は,数学界からの寄与と同様,あまり大きいとはいえない.
一方,数学はあらゆる学問分野あるいは技術分野を横断する共通言語,共通基礎技術である.
しかしながら,学界と産業界の間はもとより,学界内,産業界内においてさえ,専門分野が少しでも異なると相互間の連携あるいは情報交換はあまりないのが通例で,数学という共通言語は実際上機能していないといっても差し支えない.
さらに,数学と工学との仲をとりもつことができる人材は,わが国にはきわめて少ない.
このような能力をもつ優秀な人材を多数育成し,これらの人々を仲介として数学と工学あるいは周辺諸科学との交流と連携を深めなければ,わが国の産業の発展と応用数理の新しい研究課題の創出は望めない.
このような状況を打破し,かつ応用数理という学問分野の振興を図るために,同じ意志をもつ研究者と産業人が協力して,1990年に日本応用数理学会を発足させた.
発足時には800名程度であった会員も現在では1800名を越え,活発に学会活動を行っている.
数学者と応用数理学者との交流,応用数学者と産業人との交流は盛んになり,相互理解も次第に深まっている.
産業人は数学を工学あるいは技術により適切に応用するようになり,逆に数学者が応用の中に数学の問題を発見する機会は増大しているといえる.
しかし,その成果は,学界あるいは産業界に多大の影響を与えるまでには至っていない.
国外に目を転ずると,イギリス,アメリカ,ドイツ,フランスでは,かなり以前から応用数理の重要性を認識し,それぞれの国で応用数理のための学会を設立して活動を行ってきた.
そして,1987年にこの先進4ヶ国の学会が合同して,第1回の応用数理の国際会議をパリで開催した.
一方,日本応用数理学会が発足したとほとんど同時期に,中国,イタリア,ブラジル,北欧などでも新しい応用数理の学会が次々と誕生した.
その後これら後進の学会も加わった国際委員会が組織され,その委員会の運営により4年ごとに3000ないし4000人規模の国際会議が開催されている.
しかし,わが国からの参加者は毎回50名程度と少ない.
最近,わが国における数学教育の地盤沈下が危惧されている.
この地盤沈下は,産業基盤を危うくするだけでなく,日本人の生活基盤そのものを危うくする可能性があるとさえいわれている.
産業界でも,最近の景気低迷を背景に,応用数理を基礎に据えたような基礎研究には思うようには投資することができず,もしも数学が必要になればその時に自前でやるという方針をとっているように見える.
大学における数学教育においても,大学院高度化の浸透と授業科目の大綱化の影響で,工学系学部では数学の専門家による基礎数学の講義が停滞ないしは消滅しつつあり,ここでも数学教育が必要であれば自前でやるようになってきている.
さらに,情報工学や情報科学の分野でさえ数学を教えなくなる傾向にあるといわれている.
したがって今後,応用数理学者および数学者が,工学系学部,情報系学部の数学教育担当者との連携を強め,かつこれらの学部の人々全体の数学に対する理解の回復につとめることは,数学教育そのものの弱体化に歯止めを掛けるためと応用数理学者の職場を確保するためという両面で,緊急の課題であるといえよう.
さらに根本的に重要なこととして,初等,中等教育における数学教育の地盤沈下に歯止めを掛け,その回復に努める必要がある.
そのためには,学会活動などを通じて応用数理の重要性に対する産業界の認識を一層深めるよう努力し,さらにその認識に基づいて,産業界の側から一般国民および行政面に,数学教育の再興を図るべく働きかけてもらうようにつとめるべきであろう.
わが国の数学界は,物理学界とは比較的連帯意識が強いが,工学界との連帯意識は伝統的に弱い.
工学で要求されている数学と純粋数学との間のギャップが大きいこともあるが,前述したように両者の仲をとりもつことのできる応用数理学者が少ないことにも問題がある.
これまで全国の数学科では純粋数学指向の若者の養成が教育の主眼となっていたために,わが国では応用数理指向の研究者が系統的には育っていない.
その少ない応用数理学者は,数学分野だけでなくさまざまな学問分野に分散して研究教育活動を行っている.
そのために,応用数理分野の研究者が得ることのできる職場は自ずと限られたものになり,したがって後継者が育たないという悪循環に陥っている.
しかも上述したように,これまで応用数理学者の職場として機能してきた工学系学部の数学教育の場が失われつつある.
また,科研費の申請においても,各々の応用数理学者が活動している当該分野からは研究内容が数学の理論に寄り過ぎると見られ,一方数学界からは応用に寄り過ぎると見られ,科研費取得にも概して厳しいものがある.
このような状況を改善するためには,ある程度の数の応用数理指向の数学専攻の学生を養成し,世に送り出すようなシステムが必要であろう.
そのためには,従来の数学科においてはより多くの学生に応用数理的指向をもたせるように図り,かつ応用数理学科に相当する学科を新設ないしは増強することが望まれる.
また,応用数理の専門家を多く養成するだけでなく,大学の工学系学部,情報系学部における基礎数学教育の弱体化を阻止し,工学系,情報系学部出身の学生の数学的素養のレベルを回復させなければならない.
結論として,数学的才能に恵まれしっかりとした数学的訓練を受けた多くの若い人たちが,自ら進んで応用数理の課題に挑戦する気風を醸成するような環境づくりを,数学界,産業界双方が一体となって推し進めることを期待したい.
以上の状況分析の下に,次期数学研究連絡委員会に向けて次のことを申し送りたい.
森正武(委員長),西田孝明(幹事), 牛島照夫*(幹事),山口昌哉**, 藤田宏**,荒木不二洋,安藤毅,植竹 恒男,上野健爾,梶原壌二,山田俊雄, 伊理正夫*,河原田秀夫*,菊地文雄*, 三井斌友*(註:** 印は日本学術会議会員,*印は数学研究連絡委員会外からの委員)
第1回 平成7年1月20日(金)学士会 館本郷分館(東京) 第2回 平成7年6月17日(土)学士会 館本郷分館(東京) 第3回 平成8年9月25日(水)東京大 学数理科学研究科(東京) 第4回 平成9年3月 6日(木)東京大 学大学院工学系研究科(東京)
(文責:森 正武記)
日頃は会費の払い込みにご協力頂きまして,誠にありがとうございます. この度も,下記の通り宜しくお願い致します.
記
┌──────────────────┐ │1997年度前期会費 9,000円 │ │ 学割・高齢(70歳以上)6,000円 │ │1997年度後期会費 9,000円 │ │ 学割・高齢(70歳以上)6,000円 │ └──────────────────┘